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社長のための海外ビジネス心得

社長のための海外ビジネス心得

ニッポンが嵌まったボジョレー・ヌーヴォーの仕掛け

2007 / 11 / 5

 先日、国際航空輸送会社から次のような内容のファックスが、私のオフィスに届きました。


お客様各位

貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 ご存知のとおり、フランス産ワイン「ボジョレー・ヌーヴォー」が11月15日(木)午前零時より解禁になります。例年通り大量のボジョレー・ヌーヴォーがヨーロッパから日本に航空貨物にて輸入される予定で、11月9日頃から14日頃にかけてピークを迎えると予想されます。

 この期間は各航空会社が一般貨物の受付を停止することにより荷動きに影響が出ることが予想されますので、ご注意ください。


 ボジョレー・ヌーヴォーの解禁日である11月の第3木曜日(今年は11月15日)を控えたこの時期、ヨーロッパから日本への航空貨物便はワイン輸入業者による予約で満杯。一般の輸入業者が緊急に必要な商品を航空便で輸入しようとしても、なかなか空輸スペースが取れない状態です。

 航空便を使って輸入することが多い宝飾品、生鮮食料品、高額商品、機械部品、時計、アパレルなどの業界では、ボジョレー・ヌーヴォー騒ぎのトバッチリを受け、本来の輸入業務を一時的にストップする業者が続出しています。

 2006年には10年前の20倍近い史上最高の約1,100万本(96万ケース)を輸入し、世界最大のボジョレー・ヌーヴォー消費国である日本は、第2位ドイツの320万本、第3位米国の280万本を大きく引き離し、「ボジョレー・ヌーヴォー狂騒国」の様相を呈しています。

 日本での小売価格が平均3,000円として、小売価格換算で総額300億円以上の大量のボジョレー・ヌーヴォーの輸入から販売までが、1週間という極めて短期間のうちにおこなわれてしまうのですから驚きです。

 平均的なボジョレー・ヌーヴォーの現地出荷価格は1本約3~5ユーロ(約500~800円)程度といわれていますが、1本あたり1キロ以上の重さのワインボトルを解禁日に間に合わせるために高コストの航空便で輸入するのですから、日本での店頭価格は大変割高になります。

 それほど割高だと分かっていても、日本の消費者がこれほどボジョレー・ヌーヴォーに熱狂する理由は何なのでしょうか。「初物好き」「フランス産品への憧れ」など、いろいろな原因が考えられますが、やはり根本的な理由としては日本人独特のブランド志向や消費行動が大きいと感じます。

 日本でボジョレー・ヌーヴォーが成功した主な原因は、フランスのワイン輸出業界と日本のワイン輸入業者が日本市場の特性をよく研究し、次のような巧みなマーケティング手法を採用した結果だと考えられます。

【1】時差の活用
 フランス(ヨーロッパ)と日本の時差(日本のほうが8時間早い)を活用して、「ボジョレー・ヌーヴォーワインを本場のフランス人よりも早く味わえる!」ことを強調することで、日本の消費者の「私たちだけ」心理をくすぐったといえます。高級バッグや高級ファッションでも採用されることがあるマーケティング手法です。

【2】ブランド戦略
 フランスの有名三ツ星レストランのシェフなどを起用することで、日本市場で「ボジョレー・ヌーヴォー」を話題性豊かなブランドとしてデビューさせることができました。そして、テレビ、新聞など、マスコミを通じて、ボジョレー・ヌーヴォー解禁騒ぎを大々的に取り上げてもらう(パブリシティ)ことにも成功しました。上手なパブリシティの典型的な例といえます。

【3】日本の消費者特性を活用
 普段はワインをあまり口にしない大量の消費者をも巻き込んで、ボジョレー・ヌーヴォー解禁日をバレンタインデーやホワイトデーと並ぶ国民的なイベントに発展させることに成功しました。「他人の動向や持ち物に影響されやすい」日本人独特の均質的消費行動を巧みに掴んだ好例といえます。

 「生産地との時差や季節差」「産品のブランド化」「日本独特の消費者特性」という、マーケティングにとって重要な要素をフルに活用した結果、ボジョレー・ヌーヴォーは輸入ビジネスでの大ヒット商品になりました。

 商品に最適なマーケティング手法を採用すれば、ボジョレー・ヌーヴォーと同じように日本市場で成功する商品は他にもまだまだあるはずです。もうすぐやってくるボジョレー・ヌーヴォー騒ぎからワイン以外の業界が学ぶことは、たくさんありそうです。

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中村 貞彦

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