2007 / 9 / 14
悲観主義者や懐疑家が口にするように、私たちの普段の生活においては There's no such thing as a free lunch (=ただより高い物はない、うまい話には裏がある)という言葉が普通に受け取られています。ところが、最近のシリコンバレーではこの常識が少しずつ変わりつつあるようです。
近所のレストランやファーストフードではなく、シリコンバレーにあるさまざまな会社の社員食堂を「侵略」し、ランチをしているのです!
始めは、20代の社員が少人数で行っていたらしいのですが、今では、このエリアで働く技術者にとってランチ2.0はある種の「公式行事」の様相を呈し、最近では、一つのソーシャル・ネットワーク現象にまでなっているようです。
またランチ2.0には技術者だけではなく、ベンチャービジネスへの投資家やマスコミも参加し始め、数百人規模の(ランチ)イベントも報告されています(あまりにも拡大したため、VCやマスコミの参加を禁止するものあるようですが…)。
以前、グーグルが提供している数多くの社員サービスを紹介しましたが、同社に限らず、最近では、無料で社員に食事を提供している会社が少なくありません。そのため、よその人が社員食堂に入り込むのはそれほど難しくないという事情も、ランチ2.0が広がった要因の一つでしょう。それこそ、グーグルを解雇された社員が、勝手に食堂でランチをしていた有名なエピソードもあったようです。ちなみに、彼はグーグル社内事情についてブログに書いたことが原因で解雇されたものの、(ランチ事件が)あまりにも話題になったため、他の会社にすぐ採用されました。
こうしたランチ2.0の魅力は、イベント自体に規則や規制がそれほどないので、無料でランチにありつける他に、社外の人と交流し、接触する新しいソフトや仕事の話ができる機会にあるようです。
グーグルを例に取るまでもなく、優れた人材の獲得・維持に悩んでいるシリコンバレーの企業にとっては、社員に食事の提供をすることが、必要不可欠な「企業戦略」になってしまったことは間違いでしょう。
今では、グーグルの他にも、マイクロソフトやAOLそして他のIT大手からマイナーな会社にいたるまで積極的に主催をしています。最近では、シリコンバレーにある日立製作所の関連企業もランチ2.0を主催していました。
企業はランチ2.0によってどのようなメリットを得るのでしょうか。最も重要なのは、才能のあるブレーンと接触する貴重なチャンスが企業側にあるということです。バイキング料理とオタクの大好物なプレゼント(Tシャツ、キーホルダーや他の無料で配っているお土産)を提供しながら、新入社員を募集するテーブルも設定することもできます。ライバル企業で働いている社員にアクセスすることができますから、人手不足に悩む企業にとってはランチ2.0は非常に「美味しい」チャンスですよね。
ランチ2.0があまりにも大成功を納めたため、今では、シリコンバレーを発祥地として世界的な広がりを見せています。アメリカをはじめ、ドイツ、シンガポールやインドのバンガロールにまで、この現象が広がり始めているのです。
シリコンバレーの日立製作所関連企業が開催したランチ2.0の動画を見ることができるのですが、日本で、このようなフリーランチが見えるようになるのはいつになるのでしょう。

米国南部のノース・カロライナ州生まれ。
米メリーランド州立大学で中東史を学び、卒業後、米国で主に政治分野の報道に従事。1982年に特派員として来日。1990年、一時帰国し米コロンビア大学で 国際関係学修士(MIA)を取得。この間を除き、20年以上にわたり東京を拠点として報道に従事してきた。現在はリポーター兼プロデューサーとして、米国の民放(CBSニュース)や公共(PBS)ラジオ・テレビ放送などを通じ、日本やアジアのビジネス・経済や社会トレンドについて情報発信している。