トップページ > ベンチャーズ・アイ > Special Report > 日本一営業力がある社長

pickup

Special Report

Special Report

日本一営業力がある社長

ジャパネットたかた 高田明

2007 / 11 / 19

自ら通販番組に出演し司会を務め、年間1000億円を稼ぎ出すジャパネットたかたの高田社長。 “通販業界のカリスマ"のセールストークは、なぜ顧客の心をつかめるのか。
構成・文◎荻島央江 写真◎尾関祐士

 テレビで商品説明するときですか? 全く緊張しません。うまくやろうとするから緊張するんです。その点、僕はうまくやろうと思っていないから(笑)。
 テレビを見ているお客様にメッセージが伝わりさえすればいい。だから原稿も用意しません。だって、プロポーズをするとき、紙に書いて読む人はいませんよね。それと同じです。多少ヘタでも、自分の言葉で語った方がお客様に言いたいことは伝わるのです。

 カメラを前に、僕がいつも心掛けているのは、「上手に」ではなく、「分かりやすく」伝えることです。難しい用語を使わず、できるだけ平易な言葉で話します。「なんだかよく分からない」商品を買う人はいませんからね。
次に「面白く」。自分の学生時代を思い出してください。授業が面白いと、自然とその科目に興味がわきませんでしたか。だからこそ、我々は商品の機能や使い方だけを語ってもダメ。驚きや発見、感動が必要なんです。

 ICレコーダーを例に挙げましょう。これは通常、会議の録音などに使うものですが、当社では、小さなお子さんを持つお母さん方に売れました。機能や性能の説明は最小限にして、「『何時に帰る』とか『冷蔵庫にアイスクリームが入っているよ』など、お子さんへ伝言を残したいとき、これを使ってみてはいかがですか」とアピールしたからです。
「自分がぜひ伝えたいと思うことだけを話す」というのも心掛けていることの一つです。
 例えば、最近、反響が大きかった商品に、三洋電機の充電池「エネループ」があります。これは約1000回繰り返し使えてリサイクルが可能と、環境保護に貢献できる商品です。
 このときの放送は、もはや「テレビショッピング」の域を脱していたかもしれません。僕自身、地球温暖化などに強い関心があるので、「便利になっていくのもいいが、守るべきものは守ろう。それにはこういった商品が必要だ」と熱っぽく語りました。
 さらに、つい興奮して、「メーカーは商品をつくる。我々はそれを販売し、お客様は購入して、使う。三者それぞれ立場は違うけれども、それぞれの立場で地球環境を守っていけるんだ」とも言ってしまいました。
 結果はどうだったか? 苦情どころか、放送終了後、「よくぞ言った」とばかりのものすごい反響で、エネループもばっちり売れました。

 要は、ものを売るときに、本に書いてあるセールスの技術やセオリーはあまり関係ないんですね。僕は、営業とは自分でいいなと思ったものを人にも伝えることだと思っています。そんな自分の想いが伝われば、売り上げは自然とついてくる。

思い入れがあるからハイテンションになる
 いいものを独り占めしているのはもったいない。だからこそ、「これはぜひ伝えたい!」という気持ちが加速して、話をしながら、思わず声がかん高くなったり、身振り手振りが入ったりするんです。これは意識的にというより、気づくとそうなっている。計算しているわけではありません。

 この間も、熱が入りすぎて大変でした。商品説明を1人で1時間を2回やったんです。途中、インターバルを30分くらい挟んで。そのとき、一つめの商品、そして二つめと、声を張り上げてしゃべっていたら、年齢でしょうね、息がぜいぜいしちゃいました(笑)。こりゃたいへんだなと、「次はこちらです」と数秒、商品を映してくれている間に、息を整えて、無事にしゃべり切りました。

 僕がテンション高く、熱意を込めてしゃべっているのを見て、「元気がでる」とか「楽しいよ」とおっしゃっていただけるのはとてもありがたい。しかし、その反面、「うるさい」と思っている人もいると思います。ここが私の永遠の課題です。うるさいと感じている人に「まあ許してやろうか。いいことをいっているじゃないか」と、思っていただけるようにこれからも努力し続けたい。

 なぜ家電販売業の社長がそこまでやるのかと思う方もいるかもしれません。それは、ジャパネットたかたは、もはや単なる販売業でなく、時代が求めるものを社会へ送り出す情報発信企業だと僕自身が思っているからです。その伝え手である以上、自然体で、誠実に、物事を伝える義務がある。
会社を経営していると、いろいろなことがあります。でも、僕はこのジャパネットたかたという会社を経営するのが楽しくて仕方ない。現場で若い人からエネルギーをもらい、時代の流れを肌で感じられる。
 確かに我々はメーカーではありませんから、世の中に役立つ製品をつくることはできません。でも、その商品の素晴らしさは伝えられる。我々のメッセージで、社会を変えるためのお手伝いができるかもしれないんです。
 せっかく経営者になったのに、利益だけを追求するなんて、面白くないですよ。 (談)

高田流発想のポイント

高田流発想のポイント

高田流発想1: 「モノそのもの」ではなく、「モノの効果」を伝える

高田流発想1: 「モノそのもの」ではなく、「モノの効果」を伝える
「会議や講演をきれいに録音できる高性能が売り物です!」 「共働き家庭でのお子さんとのコミュニケーションに最適です!」
【ここがポイント】
高田社長のセールストークを語る上で最大のポイントが、商品の機能説明は最小限にとどめ、「その商品を顧客が手にすることで、どんな不便が解消され、どんな快適さが得られるのか」を集中的に話す点だ。インタビューでも触れている通り、最も分かりやすいのが2003年、同社が戦略商品として販売したICレコーダーの事例。 放送では、ICレコーダーの構造や操作方法の説明はほとんどなし。代わりに「共働き家庭でお子さんとの連絡に便利」「お店で使えば、注文を間違えなくなる」といった主張を連発した。 「モノそのもの」ではなく「モノが生み出す効果」を話すと、商品の価値は鮮明に伝わり、顧客が心を開く。高田流「伝える力」の基本中の基本だ。

【営業以外への応用】
例えば、社内にあいさつを定着させたいときは「あいさつがどんな恩恵をもたらすか」(=モノの効果)をまず話すと、導入スピードが速くなる。「あいさつをすると社内の情報交換が進み“うっかりミス"が減る」といった具体的な理由がよい。

高田流発想2: 「顧客の感心」ではなく、「顧客の共感」を狙う

高田流発想2: 「顧客の感心」ではなく、「顧客の共感」を狙う
ハプニングが起きやすく商品の魅力を伝えにくい ありのままを伝えた方が視聴者の共感を呼べる
【ここがポイント】
同社は今年6月から衛星中継車を導入するなど、スタジオの外からの生放送に力を入れている。生産現場などを訪問し、商品をアピールする意図だが、放送中は思わぬハプニングも少なくない。例えば、トンボの形をしたラジコン飛行機「メカトンボ」のセールスでは、放送日が台風接近中とあって、5回ほど試したがうまく飛ばなかった。 一般的な通販番組では条件の良い日に撮影したVTRを流すところだが、高田社長が生中継にこだわるのは「ありのままを伝えた方がお客様に気持ちが伝わる」という考えがあるからだ。 視聴者は通販番組を「本当に放送通りの性能なのか」と懐疑的に見ている。それに対し、同社の生中継にはうそ偽りはないという安心感がある。顧客の感心ではなく共感を狙うのも高田流セールス術の一つだ。

【営業以外への応用】
組織のトップがメンバーに話をする際もありのままの自分を伝えた方が社員の共感を呼び、結束力強化につながる。例えば過去の失敗談を積極的にすると効果的だ。

高田流発想3: いろいろなことを言うより、一つのことを繰り返す

高田流発想3: いろいろなことを言うより、一つのことを繰り返す
「同じ主張を繰り返すとマンネリではないか?」 「同じ主張を繰り返してこそ相手の心を動かせる」
【ここがポイント】
通販番組を含め一般的なテレビ番組は視聴者の目を引くため、紹介する商品や番組構成を次々に変える。しかし、高田社長は同じ切り口のセールストークを長期間続けることが多い。例えば最近、継続的に主張しているのが「団塊世代は自分へのご褒美を買おう」だ。 様々な名曲を自動演奏する「ピアノコンサートプレーヤー」のセールスでは、「団塊世代が若いころあこがれた、ピアノが奏でるジャズの音色を聞ける」とアピール。さらに、家庭用カラオケを「団塊世代同士の交流グッズ」、電子ピアノを「孫とコミュニケーションできる優れ物」として販売している。 高田社長の連日のセールスで財布のひもが緩んだ団塊世代も多いはず。「伝えたいことがあるなら繰り返し話す」は話し方の基本。テレビ番組でも、高田社長はそれを実践している。

【営業以外への応用】
例えば、経営理念を社内に浸透させたいならば、社員が呆れるほど繰り返すことが大切。有能な経営者ほど、同じことを繰り返し社員に語っている。
高田明 高田明(たかた・あきら)
1948年長崎県生まれ。大阪経済大学卒業後、機械メーカーを経て、74年父親が経営するカメラ店へ。86年に独立して「たかた」を設立。90年のラジオショッピングから通信販売に乗り出す。94年テレビショッピングにも進出し、業績を伸ばす。99年現社名に変更

このコーナーの新着記事


日経トップリーダー 定期購読お申し込み
日経トップリーダーバックナンバー