2008 / 6 / 12
どのような事業を手掛けていても流行り廃りというのは存在する。知人の内装業でも、昔はマンションやアパートの建て替えでフローリング床が大流行して、それ用の職人や設備を充実させていたら、最近ではフローリングは傷が付きやすいとかで需要がさっぱりになり、汚した部分だけ取り替えればよいタイルカーペットに人気が移った。
しかし、タイルカーペットは受注件数は多いものの儲からず、実は会社の利益は、ニッチ中のニッチである、掛け軸のあるような部屋の鴨居や障子の張り替えなどで上げているという。ちなみに業界の最新の流行は、経営の継ぎ手がいないけど伝統の技術を持ってるみたいな会社を社員ごと二束三文で引き取って大型化する「中小企業型M&A(企業の合併・買収)」なんだそうな。よく知らないうちに地方の衰退業界が金融業界的には最先端を走ってるわけで、世の中は分からんものだ。
内装業のように比較的安定した業界でも、顧客ニーズが目まぐるしく移り変わる以上、昨日と同じ経営を今日しても、良い明日が来るとは限らない。その意味で、今の稼ぎをどう次の新しいモノへ投資していくかという選択眼が重要になってくる。
経営に限らず、戦争でも博打でも同じことで、先のことなど誰にも分からないから全体の状況の2割が見えたらさっさと行動を開始するべきという原則がある。手を打たない状況が一番マズいわけだが、経営者の中には、いったん何かで当てて金があふれてくると、数年は自信過剰になって銀座で遊び歩いて金満臭をまき散らし、無為に過ごす人が結構いる。そのうち会社でミスも増え出し、「お前んとこ、ヤバくね?」と周辺で意見しても聞き入れなくなったりしたらもはや手遅れだ。
じゃあバンバン投資すればいいかというと、経営者も往々にして先の見通しを間違う。受注数を見越して量産体制を作ろうと思って投資したのに、数量をさばけず在庫の山ができたり、逆に期待した大口取引で受注量が多過ぎて納期をこぼして損害賠償ざたになったとか、日常茶飯事と言っていい。
これはもう仕方ない。だから経営者は経営判断のミスに気づいた瞬間に、今までやっちまった投資や工数を諦めてでも軌道修正するか、時間が経てば解決する問題かもしれないと考えて、事態を静観するかの二択を迫られることとなる。
有能な経営者であっても、かなりの確率で経営判断を間違うものなので、むしろ問題が大きくなると判断したら、さっさと前の命令を覆して別の方向へ進んだ方がマシだ。
だがこの辺、前線にいる社員がちゃんと付いてくるか、それとも「いつもの朝令暮改だから放っとけ」となるかで結果がずいぶん違う。経営者が組織をしっかり掌握しているか、意志を末端まで行き渡らせているかが重要なのは、「いざ問題が起こったときに、解決のために社員の共感や協力をきちんと得られるか」を決定するからだ。
経営者と社員の間に壁があると、問題が露見するまで時間がかかり、経営者が自分の判断ミスに気づいたころには結構な損害が発生しているといったケースも増える。ダメになるのが分かっていても引き返せない会社というのは、経営者と状況を把握している現場社員とのコンタクトが決定的に薄いのである。
最後は、ドブに足を突っ込んでいることに気づいていながら、ドブに落ちていることを認めたくない一心でドブから足を抜こうとしなくなる。そんな経営者がいかに多いことか。
イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。父親が抱えた負債を返済するため学生時代から株の個人投資を始め、ゲーム制作や投資事業などを手掛ける会社を起業。ブログなどで経済・時事問題に関する批評を展開し、インターネットでは「切込隊長」と呼ばれるカリスマ的存在。著書に『ニッポン経営者列伝 嗚呼、香ばしき人々』(扶桑社)、『けなす技術』(ソフトバンククリエイティブ)など。